みなさんこんにちは、ゆーきゃんです。
今回は「摩擦力の求め方」および「摩擦力による仕事」に関する問題を解説していきます。
「摩擦力」がからんだ複雑な状況設定の問題も難関校でよく出題されます。
今回は、過去に難関校で出題された内容をもとに上記を背景とした問題を制作してみました。
また高校物理ではよくある問題設定であり、かつ高校入試であまり出題例がなく今後出題される可能性のあるテーマまで対応できるようにしてあります。
ぜひ腕試しに挑戦してみましょう。
また、本記事と合わせて以下の記事もぜひご覧ください。
難関校を目指す方におすすめの問題集
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問題の概要
今回扱う問題は以下の通りです。
まずは自力で挑戦してみましょう!
≪Ⅰ≫の解説
≪Ⅰ≫は「ばねとゴムひもによる弾性力および静止摩擦力」をテーマとした問題です。
この問題の元ネタは、2017年に出題された洛南高校の問題です。
こちらもぜひ挑戦してみるとよいかと思います。
この問題では、ゴムひもに張力が働く瞬間を見極められるかがポイントです。
早速、解説に入っていきましょう。
答えは以下の通りです。
問1 | 問2 | 問3 |
11[cm] | 50[N/m] | 7[N] |
ゴムひもに弾性力がはたらかないときの様子は?
「力」に関する問題ですから、「注目する物体にはたらく力」を図示しましょう。
このとき、重力の「斜面に対して鉛直方向・水平方向成分」は、
「90°・60°・30°の直角三角形」の辺の比が\(1:2:\sqrt{3}\)であることを用いれば、
- 斜面に対して鉛直方向成分\(=10×\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2}=5\sqrt{3}[N]\)
- 斜面に対して水平方向成分\(=10×\displaystyle \frac{1}{2}=5[N]\)
となります。
これらを踏まえ、ゴムひもの張力がはたらかない場合における、物体にはたらく力は以下のようになります。
ここでポイントとして、
は覚えておきましょう。
2つ目のポイントはたびたび出題されますので、ぜひこちらもおさえておきたいところです。
いま、静止摩擦力の大きさを\(f_1\)[N], ばねの弾性力を\(f_2\)[N]とすると、
斜面に対して水平方向の力のつり合いより、\(f_1+5=f_2\)が成り立ちます。
なお、ばねばかりが指す力の大きさは、作用反作用の法則より\(f_2\)となることに注意します。
ゴムひもに弾性力がはたらくときの様子は?
次に、ゴムひもに弾性力がはたらく場合における、物体にはたらく力は以下のようになります。
静止摩擦力の大きさを\(f_1\)[N], ばねの弾性力を\(f_2\)[N], ゴムの弾性力を\(f_3\)[N]とすると、
斜面に対して水平方向の力のつり合いより、\(f_1+5=f_2+f_3\)…(1)が成り立ちます。
なお、ばねばかりが指す力の大きさは、作用反作用の法則より\((f_2+f_3)\)となることに注意します。
問1~問3の解説
ここで問1を考えます。
図2よりばねののびが6[cm]になる瞬間の前後で、ばねばかりの示す値の挙動が異なることが読み取れます。
つまり、これ以降についてはゴムひもに弾性力がはたらいていることが分かるので、
ゴムひもの自然長は、5+6=11[cm]となります。
続いて、問2です。
フックの法則より、ばねを6[cm]のばすのに6[N]の力が必要なので、ばねののび10[cm]のときの弾性力は10[N]となります。
そうすると、ゴムひもにはたらく弾性力の大きさは12-10=2[N]です。
この際、ゴムひもは10-6=4[cm]のびているので、弾性係数は\(\displaystyle \frac{2[N]}{0.04[m]}=50[N/m]\)です。
最後に問3です。
物体が滑り出す直前には最大静止摩擦力がはたらいており、(1)式を踏まえると、
\(f_2=10[N],f_3=2[N]\)であるから、\(f_1+5=f_2+f_3=12\)より\(f_1=7[N]\)となります。
≪Ⅱ≫の解説
≪Ⅱ≫は「等加速度運動による動摩擦係数の推定」および「ひもの張力の発生する条件の考察」をテーマとした問題です。
あまり見たことのないテーマかと思います。
「速さ-時間」グラフを利用して運動の特徴を読み取り、問題文に述べられている内容を用いて科学的に思考できるかが問われています。
早速、解説に入っていきましょう。
問4の答えは以下の通りです。
イ | ロ | ハ | ニ | ホ | ヘ | ト |
1[N] | \(\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{15}\) | a | b | \(\displaystyle \frac{8}{3}\)[N] | \(\displaystyle \frac{16}{3}\)[cm] | \(\displaystyle \frac{45}{16}\)[cm] |
運動開始直後にひもに張力は発生する?
もし、運動開始直後において「ひもに張力が発生している」と仮定したときに、どのようなことが起こるでしょうか。
また、ひもは伸び縮みしないため、ひもの両端で移動する速さは一致するはずです。
しかし、運動開始直後では物体①と物体②でそもそも速さが異なっているため、
ひもはたるんでおり、張力が発生しないことが分かります。
よって、ハの答えはaとなります。
そうすると、物体①にはたらく力は以下のようになります。
動摩擦力のポイントとして、
ことを覚えておきましょう。
問題文の記述より、
加速度の大きさ\(a[m/s^2]\)は、物体の質量を\(m[kg]\)そして物体にはたらく力の大きさを\(F[N]\)とすると、
\(a=\displaystyle \frac{F}{m}\)と表されることが分かります。
図4より、物体①は\(\displaystyle \frac{0.6-\frac{3}{8}}{\frac{3}{80}-0}=6[m/s^2]\)の加速度で減速してゆくことが分かるので、
物体①にはたらく動摩擦力の大きさを\(f_4[N]\)とすると、加速度の公式より、
\(6=\displaystyle \frac{5+f_4}{1}\)が成り立ちます。
なお、100[g]=1[N]ですから物体①の質量は1[kg]であり、≪Ⅰ≫より重力の斜面方向成分は5[N]です。
よって、イの答えは\(f_4=1[N]\)となります。
また、垂直抗力と重力の斜面に対して鉛直方向成分がつり合うので、垂直抗力の大きさは\(5\sqrt{3}[N]\)です。
以上より、ロの答えとなる動摩擦係数は\(\displaystyle \frac{1}{5\sqrt{3}}=\frac{\sqrt{3}}{15}\)となります。
両者の加速度が等しくなるときの考察
次に、両者の加速度が等しくなるときを考察しましょう。
運動開始から\(\displaystyle \frac{3}{80}\)秒後以降は、両者の速さおよび加速度が等しくなっていることが分かります。
ひもが張っているときは両端が同じ速さで運動するため、これ以降はひもが張っていることが分かります。
ここで、物体①および物体②について、それぞれにはたらく力を図示すると以下のようになります。
そのため、ニにはbが入ります。
さて、作用反作用の法則より、ひもの張力の大きさとゴムひもにはたらく弾性力の大きさは等しいです。
以上を踏まえ、両者の加速度の大きさを\(\alpha[m/s^2]\), ひもの張力を\(T[N]\)とすると、
- 物体①:\(\alpha=\displaystyle \frac{(5+1)-T}{1}\)…(2)
- 物体②:\(\alpha=\displaystyle \frac{T-2}{0.2}\)…(3)
が成り立ちます。
(2)・(3)より、\(T=\displaystyle \frac{8}{3}[N]\)となります(ホの答え)。
また、ゴムひもののびは、\(\displaystyle \frac{\frac{8}{3}[N]}{50[N/m]}×100=\frac{16}{3}[cm]\)となります(ヘの答え)。
求めた\(T\)の値を(2)に代入して、\(\alpha=\displaystyle \frac{6-\frac{8}{3}}{1}=\frac{10}{3}[m/s^2]\)となります。
よって、運動開始から両者の速さが0[m/s]になるまでにかかる時間を\(t\)秒とすると、
\(\displaystyle \frac{3}{8}-\frac{10}{3}(t-\frac{3}{80})=0\)が成立します。
これを解くと、\(t=\displaystyle \frac{3}{20}\)秒となります。
そのため、物体②の落下距離は「速さ-時間」グラフの面積を考えれば、
\(\displaystyle \frac{1}{2}×\frac{3}{8}[m/s]×\frac{3}{20}[s]×100=\frac{45}{16}[cm]\)となります(トの答え)。
このとき、単位をセンチメートルに変換するのを忘れないようにしましょう。
≪Ⅲ≫の解説
≪Ⅲ≫は「動摩擦力による仕事」および「床上を動く台に対して物体が静止する条件」をテーマとした問題です。
この問題で必要とされる考え方は難関校でよく出題されています。
問題文を的確に読み取り、誘導に乗ることができれば正解できるかと思います。
問4の答えは以下の通りです。
チ | リ | ヌ | ル | ヲ |
a | \(\displaystyle (\frac{h}{10}+V^2)\)[J] | 動摩擦力 | 2[m/s] | 50[cm] |
チの解説
斜面上において台は、垂直抗力の反作用(向きは右下)および動摩擦力の反作用(斜面に対して上向き)の力がはたらきます。
水平方向で見れば、結局のところ右向きに力が物体にはたらくので、右向きに加速します。
よって、答えはaとなります。
リ~ヲの解説
物体①が台に対して静止するとき、物体①と台の速さは等しくなります。
そうすると、
物体①と台からなる系の力学的エネルギー
=物体①の位置エネルギー+物体①の運動エネルギー+台の運動エネルギー
となります。
位置エネルギーを求める際、高さの単位はメートルになることに注意すると、
\(\displaystyle 10×\frac{h}{100}+\frac{1}{2}×1×V^2+\frac{1}{2}×1×V^2=\frac{h}{10}+V^2[J]\)と求まります(リの答え)。
しかし、物体①が斜面上を運動するとき、動摩擦力(ヌの答え)がはたらくため、
実験開始当初の力学的エネルギーといま求めた値が異なることになります。
つまり、それらの差が動摩擦力のした仕事であり、高さ\(h[cm]\)の地点に達するまで物体は斜面を\(2h[cm]=\displaystyle \frac{2h}{100}[m]\)すべったことになるので、
\(\displaystyle \frac{h}{10}+V^2-\frac{1}{2}×1×4^2=1×\frac{2h}{100}\)…(4)が成り立ちます。
また、「各物体の質量と速さの水平方向の積の総和」の値は一定なので、
\(1×4=1×V+1×V\)…(5)が成立します。
以上より、\(\displaystyle V=2[m/s], h=50[cm]\)となります(ル・ヲの答え)。
まとめ:[中学理科]難関校頻出のテーマ!「摩擦力の求め方」・「摩擦力による仕事」に関する問題を解説!
いかがでしたか。
今回は、「摩擦力の求め方」および「摩擦力による仕事」に関する問題を解説しました。
複雑な状況設定の問題でしたが、これくらいの難易度の問題が出題される可能性が高いです。
初見ですべて解ければかなりの力がついてきているといえますが、
解けなかったとしてもなぜ間違えたのかを検証し、解き直して理解できれば問題ありません。
難関校を目指す方はぜひマスターしてほしい内容でした。
引き続き、難関校頻出のテーマを解説していきますのでお楽しみに。
最後までご覧いただきありがとうございました。
また、本記事と合わせて以下の記事もぜひご覧ください。
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