みなさんこんにちは、ゆーきゃんです。
読解の心構え、論説文の読み方の概念的な話、実際の論説文の読み方や解き方をこれまでしてきました。
今回は2021年の千葉県の大問4をを用いて、これまで解説してきたことを実践してゆきたいと思います。
(問題はこちらから参照できます。)
是非、最後までご一読ください!
各段落の大意
最近の千葉県の問題は、共通テストを意識しているのか、
文章を2つ読ませて解答させるといったスタイルが論説文の問題では定着しつつあります。
まずは各段落の大意を追っていきましょう。
【1】第1・2段落
第1と第2段落についてですが、第2段落の冒頭に「他方、」という接続詞があるので、
これら2つは対比されていることが分かります。
第1段落では「与えられるということは(a)である。わたしたちは自らの誕生を選択することはできないからである。」というのがポイントです。
第2段落では「選択の自由があればこそ、わたしたちは、複数の選択肢を(b)でどれか1つを選ぶことができる。選択の存在こそ人間が自由であることの根幹に位置しているのである」がポイントです。
つまり、自分で選べないことと自分で選ぶことができることが対比されているのです。
【1】第3・4段落
第3・第4段落です。
最初と2つ目の文「ただ、選択が望みの結果をもたらすかどうかは、選択の時点で分かっているわけではない。私たちは選択を誤ることもある。」にチェックです。
その後、何が正しい選択で、何が悪い選択かを筆者はこう定義しています。
「より良い選択とは、わたしたちの願望実現をもたらす選択、いわば幸福な状況をもたらす選択であり、そうでない誤った選択、不幸をもたらす選択が悪い選択である。」
このように筆者が定義していることに、筆者の主張が現れるので要チェックです。
また、第4段落の「さらに、よい選択をしたと思っても、選択の状況が変化するなかで不運が生じることもある。」もチェックしましょう。
これらの段落では、
筆者なりのよい選択と悪い選択が定義されており、よい選択をしても状況が変化して不運が生じることもあると述べていたのでした。
【2】第1段落
次に【2】です。
第1,2文「「飾りとしての教養」に対して、わたしは、現代の若者が身につけるべき教養は、枝葉や花としての教養ではないと思っている。それは「人間の根」としての教養である。」
ここに筆者の主張が現れていますが、「人間の根としての教養」など比喩表現が入っており、具体的な内容は正直この段階では分かりません。
とりあえず、筆者は「人間の根としての教養」を身につけることが大切だと考えていることをおさえておきます。
【2】第2~4段落
第2~4段落は第1段落の内容を比喩を用いて具体的に説明していることが読み取れますか。
これらの段落では、「人間の根としての教養」を持つことの効果を木の生長に喩えて詳しく説明しています。
ここでの説明をより抽象的にしたのが第5段落になります。
【2】第5段落
続いて、第5段落です。
まず第1文に注目です。
「「教養は人間の根である」というのは、順風の中にあるとき、…その人を美しく飾る。」
ものだと筆者は考えています。
続いて、第3文に注目です。
「他方、人がさまざまな困難に遭遇するとき、その困難に打ち克つ力となって、その人を守る。」
と筆者は述べています。
結局のところ、「人間の根としての教養」とは
- 物事が上手くいっているときは、その人を美しく飾るものである
- 困難にさしかかっているときは、その困難に打ち克つ力を与えるものである
と筆者は考えているのです。
第1~5段落は、前回の記事でご紹介した抽象→具体→抽象のサンドイッチ構造になっているのが分かりますね。
【2】第6段落
最後に第6段落です。
第1文「教養のある人は、よりよい選択をすることによって身を守ることができ、よりよい人生を実現することができる」にチェックします。
また、最終文「選択肢を選択肢として認識できる能力、複数の選択肢のなかからよりよい選択肢、さらには最善の選択肢を選択するための能力、言い換えれば、最善の選択を支えるのが教養である。」にも注目します。
これらから、この段落で筆者は
「よりよい選択を行うための根幹に教養があり、それを持ち合わせそのような選択をできるようになるからこそ、よりよい人生を送ることができる」
と考えているのです。
設問の解説
次に、設問の解説に入っていきます。
(2)の解説
第1・2段落では自分で選べないことと自分で選ぶことができることが対比されていたのでした。
また、第2段落では「選択の存在が人間の自由の根幹に位置する」とも述べられているので、
(a)には自分で選ぶことができないニュアンスをもつ単語が、
(b)には自分で自由に選択肢を選ぶことができるというニュアンスをもつ単語が入ります。
(a)に注目すると選択肢を絞りにくいですが、
(b)に注目すると、「自分で自由に選択肢を選ぶことができる」ことと「自分の意思」が一番意味合いが近いですね。
ですので、答えはウとなります。
(3)の解説
第4段落での筆者の主張を思い出しましょう。
筆者は、よい選択をしても状況が変化して不運が生じることもあると主張していました。
この主張は何を意味するのかというと、
自分はよい選択をしたと思っていても、現実には望まない結果も起こる可能性がある
ということです。
その下では、何がよい選択で、何が悪い選択なのかをはっきり決めることが難しいと考えることができますね。
そうするとこのニュアンスに当てはまるのは、イとエしかありません。
ほかの選択肢も検討してみると、
アは「人間の共通の真理である」が、今のニュアンスと正反対なので間違いです。
ウは「人間の自由な精神の現れである」が間違いで、選択できることが人間の自由な精神の現れです。
オはまったく述べられていないので、間違いです。
(4)の解説
この問題は「人間の根としての教養」を筆者はどのようなものとしてとらえているかを聞いています。
傍線部より前には明らかに解答根拠は存在しないので、
傍線部より後ろから解答根拠を探していきます。
第5段落では、「人間の根としての教養」とは
- 物事が上手くいっているときは、その人を美しく飾るものである
- 困難にさしかかっているときは、その困難に打ち克つ力を与えるものである
と説明していたのですね。
また、「根」というのは何を表しているのでしょうか。
第2段落の最終文に注目すると分かりやすいと思います。
その文では、「木の生長を地中で支えているのが根である」ことが述べられています。
第3・4段落でも、どんなに大変なときでも根が木を地中から支えていることが読み取れますね。
結局、それらの表現は、「陰ながらに支えていること」を根に喩えているのですね。
以上から、「人間の根としての教養」というのは、
その人を陰ながらに支え、
物事が上手くいっているときはその人を美しく飾り、
困難と相対しているときはその困難を突破するための力を与えるものである
ということができますね。
よって、これに合致する答えはウとなります。
アとイはまったく述べられていないのですぐに消去できるかと思いますが、ウとエで迷ってしまった人も多いのではないでしょうか。
エも確かに一概に間違いとは言いづらいですが、陰ながらにその人を支えるというニュアンスがないほか、「心が傷つき、生きる希望を見失ったときに教養が必要となる」というのがあまりにも限定しすぎており不適です。
(5)の解説
続いて、(5)の解説です。
傍線部Dが何を喩えているのかが分かればすぐに解けます。
傍線部Dはどのように抽象化されているのでしょうか。
これは結局、第5段落の教養の「困難にさしかかっているときは、その困難に打ち克つ力を与える」側面を言い換えたものであることが分かりますね。
ですので、解答例は
「(人間は)しっかりと教養を身につけなければ、直面する困難を乗り越えられないこと。」(35字)
となります。
(6)の解説
最後に(6)です。
まずは、Ⅰに入る語句を考えていきます。
選択がどのような役割を持つかを説明している段落から答えを探していきます。
それを説明しているのは【1】の第2段落ですから、この段落に注目します。
第2段落の第1文に「他方、わたしたちは命をつなぐために、たくさんのことを選択する。」とあるので、Ⅰには「命をつなぐ」が入ります。
次に、Ⅱです。
問題文では「…「選択」が「最善」のものであるためには、【2】にあるような、(Ⅱ)が必要になる。これこそが教養である。」と書かれていますね。
「これこそが教養である」の「これ」の中身がⅡに入る文言であり、選択と教養の関係性を示す文がそこに入ります。
最終段落の最終文で筆者は、
「選択肢を選択肢として認識できる能力、複数の選択肢のなかからよりよい選択肢、さらには最善の選択肢を選択するための能力、言い換えれば、最善の選択を支えるのが教養である。」
と主張しています。
これと、【1】の第4段落での主張「よい選択をしても状況が変化して不運が生じることもある」も踏まえると、答えはアとなります。
ちなみに他の選択肢を見てみると、
イ・ウは本文中で全く述べられていないので、不適です。
エは正しい選択肢を選んだと思っていても状況が変化して望まない結果が起こることもあるため、「正しい選択肢を確実に見つけ出す」という記述が明らかに不適です。
読解力を鍛えるのにおすすめの参考書
読解力を鍛えるのにおすすめの参考書をご紹介します。。
文章の読み方や設問の解き方をしっかりと身につける
まずは、文章の読み方や設問の解き方をしっかりと身につけるが大切です。
数学でも計算のやり方が分からなければ計算できないのと同じように、
国語の読解に関してもしっかりとした型を作ることが重要です。
このあたりのことは別記事で解説していきますが、以下の書籍をまず参考にするとよいでしょう。
高校受験に向けて、国語の読解を勉強し始めるときに最適な1冊です。
解き方が図解されていて分かりやすいので、無理なく取り組むことができます。
これらはスタサプの柳生先生が執筆した書籍で、ここまで現代文の読み方や解き方について詳しく説明しているものはないと思います。
中学生であってもしっかりと読み方・解き方を身につけるためにも、非常に参考になる書籍です。
読解問題のある意味「辞書」的な位置付けとして、利用するのも一手かと思います。
正しい読み方・解き方での問題演習
正しい読み方や問題の解き方が身についたら、問題演習を行っていきましょう。
徐々にレベルが上がるようにして問題集をこなしてゆくのがポイントです。
まずは基礎レベルとして、以下の3冊に取り組んでみましょう。
身につけた読み方・問題の解き方を実践する基礎問題集として上記3冊がおすすめです。
自分の学年に合わせて、中1・中2・中3国語から1冊選んで取り組んでみるとよいかと思います。
続いて、その次のレベルとして以下の書籍がおすすめです。
まずは易しい問題から始めて、徐々にステップアップしてゆきたいという方にはおすすめです。
ここで基礎・標準レベルを固めた上で、問題演習を行ってゆくときに以下の書籍がおすすめです。
まずは偏差値60から始め、そこから偏差値65へとステップアップしてゆくことが理想です。
難関校を目指すなら偏差値65まではやった方がよいかと思いますが、
そうでないのなら偏差値60までで打ち止めても問題ないかと思います。
これらすべてをこなし、難関私立校を目指す方には以下の書籍にもトライしてみるとよいでしょう。
全国の難関私立校の問題を分析し精選された問題が収録されているので、効率的に難関私立校で求められる読解力を養うことができます。
まとめ:国語ができなかった人が教える「論説文の読み方のコツ」「問題の解き方」~実践編②~
いかがでしたか。
実際の入試問題を通して、これまで解説してきた読み方や解き方を実践してきました。
筆者の主張や本文中の論理関係が実際の問題で問われていることを理解してもらえたかと思います。
過去問を解いたり、問題演習を行ってゆく際はこのように解いてゆけるとよいでしょう。
今回で一旦は論説文の解説は終了し、小説文の読解の解説を次回は行っていきます。
ご一読いただきありがとうございました。
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