みなさんこんにちは、Yutaです。
これまで中学数学を中心に解説してきましたが、大学入試の数学について解説を始めることにしました。
ぜひ今後ともよろしくお願いいたします。
今回は、2023年度に早稲田理工で出題された[Ⅰ]を解説していきます。
この問題は東大でも類題が出題されるなど、有名な問題であります。
整数問題でよく用いられる考え方が詰まった良問ですので、ぜひ挑戦してみてください。
問題の概要
問題の概要は以下の通りです。
\(n\)を自然数として, 整式\((3x+2)^n\)を\(x^2+x+1\)で割った余りを\(a_nx+b_n\)とおく。以下の問に答えよ。
(1)\(a_{n+1},b_{n+1}\)を\(a_n,b_n\)を用いて表せ。
(2)全ての\(n\)に対して, \(a_n,b_n\)は7で割り切れないことを示せ。
(3)\(a_n,b_n\)を\(a_{n+1},b_{n+1}\)で表し,全ての\(n\)に対して, 2つの整数\(a_n,b_n\)は互いに素であることを示せ。
(1)の解説
ひとまず、\((3x+2)^n\)を\(x^2+x+1\)で割ったときの商を\(Q_n(x)\)とおきます。
そうすると、\((3x+2)^n=(x^2+x+1)Q_n(x)+a_nx+b_n\)…①が成り立ちます。
いま、\(a_{n+1}x+b_{n+1}\)について考えたいわけなのですが、
これらは\((3x+2)^{n+1}\)を\(x^2+x+1\)を割ったときの余りとなります。
そこで、①を利用して無理やり\((3x+2)^{n+1}\)を作り出します。
①の両辺に\((3x+2)\)をかけることにより、
\begin{eqnarray}
(3x+2)^{n+1}&=&(3x+2)(x^2+x+1)Q_n(x)+(3x+2)(a_nx+b_n)\\
&=&(3x+2)(x^2+x+1)Q_n(x)+3a_nx^2+(2a_n+3b_n)x+2b_n…②
\end{eqnarray}
を得ます。
ところで、\(3a_nx^2+(2a_n+3b_n)x+2b_n\)は2次式なので、\(x^2+x+1\)で割ることができます。
実際に割り算を実行してみると、
\(3a_nx^2+(2a_n+3b_n)x+2b_n=3a_n(x^2+x+1)+(3b_n-a_n)x+2b_n-3a_n\)…③を得ます。
③を②に代入し、
\begin{eqnarray}
(3x+2)^{n+1}&=&(3x+2)(x^2+x+1)Q_n(x)+3a_nx^2+(2a_n+3b_n)x+2b_n\\
&=&(x^2+x+1)\{(3x+2)Q_n(x)+3a_n\}+(3b_n-a_n)x+2b_n-3a_n
\end{eqnarray}
となります。
\((3b_n-a_n)x+2b_n-3a_n\)こそが\(a_{n+1}x+b_{n+1}\)となるので、
\begin{cases}
a_{n+1}=-a_n+3b_n…③\\
b_{n+1}=-3a_n+2b_n…④
\end{cases}
が答えとなります。
(2)の解説
実験して、規則性を見つけ出す
整数問題で行き詰ったときは、
ということを覚えておきましょう。
というわけで、\(a_2,b_2,a_3,b_3\)の値を(1)の結果を用いて求めてみましょう。
\((a_1,b_1)=(3,2)\)ですから、\((a_2,b_2)=(3,-5),(a_3,b_3)=(-18,-19)\)となります。
ところで、
という「除法の原理」一般にが知られています。
いまの場合、まず\(b_2\)に関して、\(-5=7×(-1)+2\)となって、7で割った余りは2です。
\(a_3\)に関して、\(-18=7×(-3)+3\)となって、7で割った余りは3です。
\(b_3\)に関して、\(-19=7×(-3)+2\)となって、7で割った余りは2です。
以上から、何か規則性が見えてきませんか?
\(a_n\)を7で割った余りは3で、\(b_n\)を7で割った余りは2である
という仮説が立ちます。
これが正しいことを以下では証明していきましょう。
仮説を証明する
今回のような命題の証明については、
とよいことをぜひ覚えておきましょう。
この証明にあたっては、合同式を用いると便利なのでこれを利用してやっていきます。
合同式の定義および性質については、こちらのページで解説しております。
(証明)
すべての正の整数\(n\)に対して,\(\mod 7\)として,
\begin{cases}
a_{n}\equiv 3\\
b_{n}\equiv 2
\end{cases}
となることを数学的帰納法を用いて示す。なお,以下合同式はすべて\(\mod 7\)である。
(Ⅰ)\(n=1\)のとき,\((a_1,b_1)=(3,2)\)となるため, 成立。
(Ⅱ)\(n=k\)(\(k\):正の整数)のとき,成立を仮定すると,
\begin{cases}
a_{k+1}\equiv -a_k+3b_k \equiv 3\\
b_{k+1}\equiv -3a_k+2b_k \equiv -5 \equiv 2
\end{cases}
となって,\(n=k+1\)のときも成立。
以上より, すべての正の整数\(n\)に対して,\(a_{n}\equiv 3,b_{n}\equiv 2\)が成り立つ。
よって, \(a_{n},b_{n}\)は7で割り切れない。
(Q.E.D.)
(3)の解説
問題の誘導に乗ってみる
いよいよ、本題である(3)の解説に入ります。
問題文に「\(a_n,b_n\)を\(a_{n+1},b_{n+1}\)で表せ」とあるので、実際にやってみます。
③・④を\(a_n,b_n\)に関する連立方程式だとみなして解いてみると、
\begin{cases}
a_{n}=\dfrac{2a_{n+1}-3b_{n+1}}{7}…⑤\\
b_{n}=\dfrac{3a_{n+1}-b_{n+1}}{7}…⑥
\end{cases}
となります。
ここまではすんなりといけますが、ここからどのようにして証明をしていけばよいのでしょうか。
「互いに素」であることを示すには?
ここでポイントです。
ことが基本です。
今回は、先ほどの⑤・⑥を利用したいので、「\(a_{n+1},b_{n+1}\)が素因数\(p\)を持つこと」を仮定します。
そうすると、整数\(x_{n+1},y_{n+1}\)を用いて、
\begin{cases}
a_{n+1}=px_{n+1}\\
b_{n+1}=py_{n+1}
\end{cases}
と表すことができます。
これらを⑤・⑥に代入して、
\begin{cases}
a_{n}=\dfrac{2px_{n+1}-3py_{n+1}}{7}=\dfrac{2x_{n+1}-3y_{n+1}}{7}p…⑦\\
b_{n}=\dfrac{3px_{n+1}-py_{n+1}}{7}=\dfrac{3x_{n+1}-y_{n+1}}{7}p…⑧
\end{cases}
となります。
ここで(2)の結果を用いると、\(p\neq7\)であり、\(a_n,b_n\)は整数ですから、
\(\displaystyle \frac{2x_{n+1}-3y_{n+1}}{7},\frac{3x_{n+1}-y_{n+1}}{7}\)も整数となります。
よって、\(a_n,b_n\)も素因数\(p\)を持つことになります。
同様の操作を繰り返し行ってゆくと、\((a_{n-1},b_{n-1}),(a_{n-2},b_{n-2}),…(a_2,b_2),(a_1,b_1)\)いずれの2つの整数の組についても素因数\(p\)をもつことになります。
しかし、\((a_1,b_1)=(3,2)\)は互いに素なので、矛盾します。
よって、背理法によって命題が正しいことが証明できます。
以下、解答例です。
(証明)
\(a_{n+1},b_{n+1}\)が素因数\(p\)を持つことを仮定する。
このとき,整数\(x_{n+1},y_{n+1}\)を用いて,
\begin{cases}
a_{n+1}=px_{n+1}\\
b_{n+1}=py_{n+1}
\end{cases}
と表すことができる。
そうすると,
\begin{cases}
a_{n}=\dfrac{2px_{n+1}-3py_{n+1}}{7}=\dfrac{2x_{n+1}-3y_{n+1}}{7}p\\
b_{n}=\dfrac{3px_{n+1}-py_{n+1}}{7}=\dfrac{3x_{n+1}-y_{n+1}}{7}p
\end{cases}
となる。
(2)より\(p\neq7\)であり,\(a_n,b_n\)は整数であるから,\(\displaystyle \frac{2x_{n+1}-3y_{n+1}}{7},\frac{3x_{n+1}-y_{n+1}}{7}\)も整数となる。
よって, \(a_n,b_n\)も素因数\(p\)を持つことが分かる。
同様の操作を繰り返してゆくと,\((a_{n-1},b_{n-1}),(a_{n-2},b_{n-2}),…(a_2,b_2),(a_1,b_1)\)いずれの2つの整数の組についても素因数\(p\)をもつことがいえる。
しかし,\((a_1,b_1)=(3,2)\)が互いに素であることに矛盾する。
よって,\(a_{n+1},b_{n+1}\)は互いに素である。
したがって,\(a_n,b_n\)も互いに素であるといえる。
(Q.E.D.)
このように、整数列に関する整数問題では、
の2つの活用も考えることが大切です。
これらの帰納法と背理法を組み合わせて解く問題はよく出題されます。
他にも類題にあたり、トレーニングしておくとよいでしょう。
まとめ:[高校数学]「互いに素」を示すには?2023年度早稲田理工[Ⅰ]を解説!
いかがでしたか。
今回は、2023年度早稲田理工[Ⅰ]を解説しました。
整数問題に関わる重要な考え方が詰まっており、非常に学習効果が高い問題でした。
東大などでも類題があるので、こちらもぜひ解いてみるとよいかと思います。
今後も過去問等を解説してゆきますので、お楽しみに。
最後までご覧いただきありがとうございました。
コメント