みなさんこんにちは、Yutaです。
今回は、「逆像法」について解説します。
難関大を中心に、「軌跡と領域」をテーマとした問題が好んで出題されます。
この問題へのアプローチとして、「順像法」と「逆像法」の2つの手法があります。
順像法は別記事で紹介することとして、今回は「逆像法」について実際の大学入試の問題を用いて解説していきます。
ぜひ、この考え方をマスターしてもらえればと思います。
今回解説する問題の概要
今回は、2023年度慶應義塾大学薬学部で出題された問題を解説します。
問題の概要は以下の通りです。
原点をOとする\(xy\)平面上に点A(1,-1)があり, \(\vec{AB}=(2 \cos \theta,2 \sin \theta)(0 \leq \theta \leq 2 \pi)\)を満たす点である。Bの軌跡を境界線とする2つの領域のうち, 点Aを含む領域を\(C\)とする。ただし, \(C\)は境界線を含む。
(1)点Bの軌跡の方程式を求めよ。
(2)\(p,q\)がすべての実数を取りうるとき, 点\((p-q,pq)\)が\(xy\)平面上で動いてできる領域を表す式を求めよ。
(3)点\((p,q)\)が\(C\)上のすべての点を動くとき, 点\((p-q,pq)\)が\(xy\)平面上で動いてできる領域を\(D\)とする。このとき,\(D\)の満たすべき式を求めよ。
(慶應大薬学部・改題)
(1)の解説
Bの軌跡を求めたいので、 \(\vec{OB}\)を媒介変数\(\theta\)を用いて表します。
\begin{eqnarray}
\vec{OB} &=& \vec{OA} + \vec{AB} \\
&=& (1,-1) + (2 \cos \theta,2 \sin \theta)\\
&=& (2 \cos \theta + 1, 2 \sin \theta-1)
\end{eqnarray}
となります。
ここで、B\((x,y)\)とすれば、
\begin{cases}
x=2 \cos \theta + 1\\
y=2 \sin \theta-1\\
\end{cases}
となるので、
\begin{cases}
\cos \theta = \dfrac{x-1}{2}…①\\
\sin \theta = \dfrac{y+1}{2}…②\\
\end{cases}
となります。
\((0 \leq \theta \leq 2 \pi)\)であるから、\(-1 \leq \cos \theta \leq 1, -3 \leq \sin \theta \leq 1\)です。
よって、①と②より、\(-1 \leq x \leq 3, -1 \leq y \leq 1\)となります。
\(\cos^2 \theta + \sin^2 \theta =1\)であり、①・②から、
\begin{gather}
(\dfrac{x-1}{2})^2+( \dfrac{y+1}{2})^2=1\\
(x-1)^2+(y+1)^2=4
\end{gather}
を得ます。
\(-1 \leq x \leq 3, -1 \leq y \leq 1\)を踏まえると、点Bの軌跡は円\((x-1)^2+(y+1)^2=4\)となります。
(2)の解説
特定の点はその図形に含まれるか?
次に、(2)を解説します。
解説に入る前に、実験をしてみたいと思います。
まず、点(1,1)がこの問題で問うている図形に含まれるかを考えてみます。
もしこの点がその図形に含まれるのであれば、
\begin{cases}
p-q = 1…③\\
pq = 1…④\\
\end{cases}
を満たすような実数\(p,q\)が存在しなければなりません。
③と④を少し変形すると、
\begin{cases}
p+(-q) = 1…③’\\
p \cdot (-q) = -1…④’\\
\end{cases}
となります。
このとき、二次方程式の解と係数の関係を用いれば、\(p,-q\)は二次方程式\(t^2-t-1=0\)の解となります。
実際にこの二次方程式を解くと実数解が得られるので、③・④を満たす実数\(p,q\)が存在することになります。
そのため、点(1,1)はその図形に含まれます。
この操作を座標平面上のすべての点で行えば、点\((p-q,pq)\)が動いてできる領域が見えてきます。
これこそが「逆像法」です。
まとめると、
となります。
以下、逆像法を利用して問題を解いていきます。
(2)の解答
\begin{cases}
x = p-q …⑤\\
y = pq …⑥\\
\end{cases}
とおけば、点\((x,y)\)の動く領域を求めるには、⑤および⑥を満たす実数\(p,q\)が存在するための条件を考えればよいことになります。
⑤・⑥を変形し、
\begin{cases}
x = p+(-q) …⑤’\\
-y = p \cdot (-q) …⑥’\\
\end{cases}
となることから、\(p,-q\)は二次方程式\(t^2-xt-y=0\)の解となります。
そのため、この二次方程式が実数解を持つ条件を求めることができればよいということになります。
判別式を\(D_1\)とすると、
\begin{eqnarray}
D_1 &=& x^2-4 \cdot 1 \cdot (-y) \\
&=& x^2 + 4y \geq 0
\end{eqnarray}
となればよいので、求める図形が満たす式は\(\displaystyle y \geq -\frac{1}{4}x^2\)となります。
(3)の解説
(3)では(2)と異なり、\(p,q\)の範囲に制限が付きます。
これを考慮して問題を解いていかなければなりません。
点\((p,q)\)は領域\(C\)上の点であることから、(1)の結果を用いて、
\((p-1)^2+(q+1)^2 \leq 4\)…⑦を満たす必要があります。
⑦を(2)で定義した\(x,y\)を用いて表すと、
\begin{eqnarray}
(p-1)^2+(q+1)^2 &=& p^2 +q^2 -2p + 2q +2 \\
&=& (p-q)^2+2pq-2(p-q)+2\\
&=& x^2+2y-2x+2
\end{eqnarray}
となることから、
\begin{gather}
x^2+2y-2x+2 \leq 4 \\
y \leq -\dfrac{1}{2}x^2 +x +1
\end{gather}
となります。
(2)と合わせて、答えは
\(\displaystyle y \geq -\frac{1}{4}x^2\)かつ\(y \leq -\dfrac{1}{2}x^2 +x +1\)
となります。
まとめ:[高校数学]難関大で頻出!「逆像法」を用いた軌跡・領域の問題の解き方を解説!
いかがでしたか。
今回は、「逆像法」について解説しました。
図形の軌跡や領域に関する問題は難関大ではかなりの頻度で出題されます。
しかしこの手の問題は「順像法」または「逆像法」で解けることがほとんどです。
そのため、難関大を目指される方は「逆像法」の考え方をしっかりとマスターしておくとよいでしょう。
別記事でもうひとつの手法である「順像法」についても解説してゆくのでお楽しみに。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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