みなさんこんにちは、ゆーきゃんです。
今回は、「ベイズの定理」に関する有名問題である「陽性者で実際に病気にかかっている確率」の求め方について解説していきます。
以前「モンティ・ホール問題」について解説しましたが、今回解説する問題はそれと似たような類のものです。
大学入試ではこれに関する問題が慶応義塾大学薬学部で出題されていたりするなど、入試でも問われるような内容となっています。
「モンティ・ホール問題」が高校入試で出題されていることからも、今後出題される可能性のある問題かと思います。
ぜひ、中学生の方も挑戦してみてください!
また、本記事と合わせて以下の記事もぜひご覧ください。
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今回解説する問題の概要
次の問題について、まず考えてみましょう。
全人口に対して罹患率(そのウイルスに感染している人の割合)が0.3%であるウイルスがある。
この集団に対してある検査を実施し、「陽性(感染している)」か「陰性(感染していない)」かを判定する。
この検査において、非感染者に対して「陽性」と判定する確率は0.1%である。
一方、感染者に対して「陰性」と判定する確率は0.2%である。
このとき、以下の問に答えよ。
問1 感染者が「陽性」と判定される確率を求めよ。
問2 この集団から無作為に1人を抽出し検査を行うとき、「陽性」と判定される確率を求めよ。
問3 この集団から無作為に1人を抽出し検査を行ったところ、「陽性」と判定された。
このとき、「陽性」と判定された人が実際にウイルスに感染している確率を求めよ。
「ベイズの定理」の解説
今回解説する問題や「モンティ・ホール問題」の背景にある「ベイズの定理」について解説します。
今回解説する問題に即して、具体的に説明しましょう。
今回解説する問題では、「感染者」に対して「陽性」と判定される確率は問題文から簡単に求めることができます。
もし、検査を実施したときに「陽性」だと判定される確率を求めることができれば、
問3で問われているような、「陽性」と判定されたときに実際にウイルスに感染している確率を導出できます。
このように予め分かっている確率を用いて、ある事象が発生したときに、注目する事象の発生する確率を「ベイズの定理」を用いて求めることができるのです。
問題の解説
問1の解説
まず、問1の解説です。
以下、各事象を次のように定義します。
- \(A\):「ウイルスに感染している」事象
- \(\overline{A}\):「ウイルスに感染していない」事象
- \(X\):検査で「陽性」と判定される事象
- \(\overline{X}\):検査で「陰性」と判定される事象
- \(P_Y(Z)\):事象\(Y\)が起こったときに、事象\(Z\)が起こる確率
(\(Y,Z\)は上記の\(A,\overline{A},X,\overline{X}\)のいずれか)
そうすると、問題文より、
- \(P(A)=\displaystyle \frac{3}{1000}\)
- \(P_\overline{A}(X)=\displaystyle \frac{1}{1000}\)
- \(P_A(\overline{X})=\displaystyle \frac{2}{1000}\)
であることが分かります。
\(P_A(\overline{X})+ P_A(X)=1\)ですから、
問1の答えは、\(\displaystyle P_A(X)=1-P_A(\overline{X})=\frac{499}{500}(=\frac{998}{1000})\)となります。
同様にして、\(\displaystyle P_\overline{A}(\overline{X})=1-P_\overline{A}(X)=\frac{999}{1000}\)と求まります。
問2の解説
次に、問2です。
「条件付き確率」の公式より、事象\(Y,Z\)がともに起こる確率\(P(Y \cap Z)\)は、
\(P(Y \cap Z)=P_Y(Z)P(Y)\)と計算できます。
これに基づくと、以下に示す表の各マスにおける確率が計算できます。
\(X\):「陽性」 | \(\overline{X}\):「陰性」 | 合計 | |
\(A\):「感染者」 | \(P_A(X)P(A)=\displaystyle \frac{998}{1000}P(A)\) | \(P_A(\overline{X})P(A)=\displaystyle \frac{2}{1000}P(A)\) | \(P(A)\) |
\(\overline{A}\):「非感染者」 | \(P_\overline{A}(X)P(\overline{A})=\displaystyle \frac{1}{1000}P(\overline{A})\) | \(P_\overline{A}(\overline{X})P(\overline{A})=\displaystyle \frac{999}{1000}P(\overline{A})\) | \(P(\overline{A})\) |
合計 | \(P(X)\) | \(P(\overline{X})\) | \(1\) |
\(P(A)+P(\overline{A})=1\)および、\(\displaystyle \frac{998}{1000}P(A)+\frac{1}{1000}P(\overline{A})=P(X)\)であることから、
\(P(X)=\displaystyle \frac{3991}{1000000}\)と問2の答えが求まります。
問3の解説
最後に、問3です。
「ベイズの定理」より、
\begin{eqnarray}
P_X(A)&=&\frac{P_A(X)P(A)}{P(X)}\\
&=&\frac{\frac{998}{1000}×\frac{3}{1000}}{\frac{3991}{1000000}}\\
&=&\frac{2994}{3991}
\end{eqnarray}
と求まります。
なお、この値を百分率表示すると、約75%となります。
裏を返せば、「陽性」と判定された人の約25%はウイルスに感染していないことになります。
ウイルスに感染している人に対して高い精度で「陽性」と判定できるはずなのに、
陽性者の中で実際に感染している人は75%という、その高い精度に矛盾した結果となり、
この検査の精度として十分なのかという疑念が生じます。
「モンティ・ホール問題」と同様に、私たちの直観と反することが興味深いですね、
製薬会社ではこの問いで求めたような確率を計算し、検査薬等の精度を高めるための取り組みが絶えず行われています。
このように「ベイズの定理」は単に入試で出題されるだけでなく、医療の世界においても重要な役割を果たしているのです。
まとめ:[中学数学]陽性者で実際に病気にかかっている人の割合は?「ベイズの定理」に関する有名例題を解説!
いかがでしたか。
「ベイズの定理」に関する有名問題である「陽性者で実際に病気にかかっている確率」の求め方について解説しました。
今後入試で出題される可能性もあるので、一度解いてみるとよい経験になるかと思います。
入試で出題されるだけでなく、医療の世界においても活用される重要な定理ですから、ぜひ覚えておきましょう。
今後も数学における重要な問題等を解説してゆくのでお楽しみに。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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