みなさんこんにちは、ゆーきゃんです。
今回は、「モンティ・ホール問題」を解説していきます。
これを背景とした問題が2022年度の江戸川学園取手高の入試で出題されました。
実際の確率と私たちの直観が反するという、なかなか面白い問題となっています。
中学生の方にとっては馴染みの薄い内容かもしれませんが、非常に興味深い内容ですのでぜひ考えてみてください。
また、本記事と合わせて以下の記事もぜひご覧ください。
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問題の概要
2022年度の江戸川学園取手高で出題された「確率」の問題の概要は以下の通りです。
- 3つの箱A・B・Cに当たりが1つ入っている(当たりがどの箱に入るかは同様に確からしいものとする)。
- 太郎君は3つの箱のうち1つの箱を選択する。
- 当たりがどの箱に入っているかを知っている花子さんは、太郎君の選ばなかった残りの箱の1つを無作為に選んで開ける(このとき、当たりの入っていない箱を開けるものとする)。
- 3.の結果を踏まえて、太郎君は箱を選び直すことができる。
4.において、太郎君は箱を「変える」あるいは「変えない」のどちらを選択すべきであろうか。
みなさんは、どちらを選択すべきだと思いますか。
よくある「誤答」
この問題に対して、よくある誤答は以下の通りです。
結局のところ、残った2つの箱のうちのどちらかに当たりが入っているのであるのだから、
当たりの入った箱を選ぶ確率は、\(\displaystyle \frac{1}{2}\)である。
したがって、箱を変えても変えなくてもどちらでもよい。
しかし、実際は箱を「変えた」方が太郎君にとってはよい選択なのです。
この問題は「モンティ・ホール問題」と言われています。
アメリカで実際にこれと同じ内容をテレビ番組で放送したところ、大多数の人がそのように答えたそうです。
どうも私たちの直観に反する答えであるので、腑に落ちない方も多いでしょう。
なぜ、箱を変えるべきなのかを「確率」を用いて考えてゆきましょう。
「モンティ・ホール問題」の解説
花子さんが箱を開けるときのパターンはどうなる?
仮に太郎君が最初にAを選んだとして議論を進めても一般性を失わないので、その前提の下考察を進めていきます。
次に、花子さんが箱を開けるときのパターンについて考えます。
これは以下の表にまとめられます。
当たりの箱 | 花子さんの開ける箱 |
A | BまたはC |
B | C |
C | B |
- 当たりの箱がAの場合、太郎君がAを選んでいるため、花子さんはBまたはCを開ける。
- 当たりの箱がBの場合、花子さんは当たりが入っていない箱でかつ太郎君が選んでいない箱を開けるため、Cを開く。
- 当たりの箱がCの場合、花子さんは当たりが入っていない箱でかつ太郎君が選んでいない箱を開けるため、Bを開く。
この表より、それぞれが起こる確率を表にまとめると以下のようになります。
Aが当たりの箱である場合は、Bを開くかCを開くかを花子さんはランダムに決めるため、
それぞれの箱が開かれる確率は\(\displaystyle \frac{1}{2}\)となることに注意します。
当たりの箱 | 開かれる箱 | 確率(=各箱が当たりである確率×それぞれの状況において各箱が開かれる確率) |
A | B | \(\displaystyle \frac{1}{3}×\frac{1}{2}=\frac{1}{6}\) |
A | C | \(\displaystyle \frac{1}{3}×\frac{1}{2}=\frac{1}{6}\) |
B | C | \(\displaystyle \frac{1}{3}×1=\frac{1}{3}\) |
C | B | \(\displaystyle \frac{1}{3}×1=\frac{1}{3}\) |
これらを踏まえ、考察を進めていきます。
花子さんの操作を受けて、各箱が当たりである確率はどうなる?
続いて、花子の操作を受けて各箱が当たりである確率を求めていきましょう。
その第一歩として、各箱が開けられる確率を求めます。
そうすると、Bが開かれる確率は、「当たりの入っている箱」の場合分けによって求めることができます。
なお、各箱に当たりの入っている確率は同様に確からしいので、いずれも\(\displaystyle \frac{1}{3}\)です。
当たりの入っている箱 | 確率(=各箱に当たりの入っている確率×それぞれの状況においてBが開かれる確率) |
A | \(\displaystyle \frac{1}{3}×\frac{1}{2}=\frac{1}{6}\) |
B | \(0\) |
C | \(\displaystyle \frac{1}{3}×1=\frac{1}{3}\) |
合計 | \(\displaystyle \frac{1}{2}\) |
よって、Bの箱が開けられる確率は\(\displaystyle \frac{1}{2}\)です。
また、全確率は1でありAの箱が開かれることはないため、
Cの箱が開かれる確率は\(\displaystyle 1-0-\frac{1}{2}=\frac{1}{2}\)です。
ここで、「条件付き確率」という概念を導入します。
事象\(X\)が起こった下において、事象\(Y\)の発生する確率\(P_X(Y)\)は、
$$P_X(Y)=\frac{P(X\cap Y)}{P(X)}$$
となる(\(P(X \cap Y)\):事象\(X,Y\)がともに発生する確率)。
そうすると、花子さんが箱Bを開けた場合を考えると、
- (Bを開いた下で、Aに当たりの入っている確率)
=(Aに当たりが入っていて、かつBを開く確率)÷(Bを開く確率)
\(=\displaystyle \frac{\frac{1}{6}}{\frac{1}{2}}=\frac{1}{3}\) - (Bを開いた下で、Cに当たりが入っている確率)
=(Cに当たりが入っていて、かつBを開く確率)÷(Bを開く確率)
\(=\displaystyle \frac{\frac{1}{3}}{\frac{1}{2}}=\frac{2}{3}\)
となり、箱Cに選び直した方がよいことが分かります。
もし、花子さんが箱Cを開けたとしても同様の計算から、箱Bに当たりの入っている確率の方が大きくなります。
以上から、太郎君は箱を選び直した方がよいことがいえます。
論理的に導かれる結果と私たちの直観が反することを示す非常に興味深い問題でした。
まとめ:[中学数学]江戸川学園取手高で出題された「確率」の面白い問題!「モンティ・ホール問題」を解説!
いかがでしたか。
今回は、「モンティ・ホール問題」を解説しました。
この問題は、論理的に導き出される確率と私たちの直観が反することを示す興味深いものです。
この問題の背景には「ベイズの定理」といわれる確率論の世界における有名な定理があり、
この定理が昨今話題となっている「機械学習」や医療の世界でも応用されています。
そのような意味においても、非常に意義のある問題です。
この定理に関しても今後解説してゆくのでお楽しみに。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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