みなさんこんにちは、ゆーきゃんです。
今回は、都立西高校で出題された「整数問題」を解説していきます。
都立西高校では例年大問4で「規則性」や「整数」を背景とした問題が出題されています。
年度によっては、かなりの難問が出題されることもあります。
都立西高校を受験予定の方や難関私立高を目指す方はぜひ解いてみましょう。
また、本記事と合わせて以下の記事もご覧ください。
「整数問題」攻略におすすめの問題集
高校入試対策で、整数問題を攻略したい方には次の問題集がおすすめです。
高校入試の整数問題に特化した問題集はあまりありませんが、
この1冊をこなせば難関私立校に対応できる力をしっかりと養うことができます。
とっかかりづらい整数問題の解法を分かりやすく整理しているので、難関私立校を受験される方にはおすすめの1冊です。
2021年度に出題された「整数問題」
まず、2021年度に出題された「整数問題」を解説していきます。
「整数問題」ではおなじみの解き方が利用できるかと思いますが、
それだけでなく問題文で述べられている情報も活用できないと厳しい問題です。
そのような点において、「整数問題」に対する総合力が問われているといえるでしょう。
問題はこちらから参照できます。
問1の解説
まずは問1です。
この問題は必ずできて欲しいです。
\((x,y)=(4,3)\)とすると、\(m^2-n^2=12\)となりますね。
ここで、左辺を「因数分解」して、\((m+n)(m-n)=12\)となります。
これを満たす\((m,n)\)の組は、\((m,n)=(4,2)\)のみです。
\(x,y\)の値などを試行錯誤する必要がありますが、やるべきことはシンプルなのでぜひ正解してほしい問題でした。
問2の解説
続いて、問2です。
ここでのポイントは、
「存在性の証明」では、「条件を満たすものが1つでも存在する」ことを示す
ということです。
この問題も「1つでも問題の条件に合致するものが存在する」といえればそれでよいのです。
ですので、そのような方針で解いていきましょう。
ここで、表について見ていきましょう。
一般に、2数の和に関して次のことがいえます。
- 2つの数の偶奇が一致する→2数の和は「偶数」となる
- 2つの数の偶奇が一致しない→2数の和は「奇数」となる
ピンとこない方は「文字式」を活用して証明してみましょう。
今回は、1つでも\((m,n)\)の組が存在することがいえればよいので、\(x,y\)がともに偶数になる場合を考えれば十分です。
以上を踏まえ、証明を書くと以下のようになります。
(証明)
題意を示すには、\(x,y\)がともに偶数になる場合において、
\((m+n)(m-n)=xy\)を満たす正の整数の組\((m,n)\)が1つ存在することをいえればよい。
そこで、\(m+n>m-n\)に注意して、
\begin{gather}
\begin{cases}
m+n=x \\
m-n=y
\end{cases}
\end{gather}
を満たす正の整数の組\((m,n)\)が存在するか調べる。
そうすると、\((m,n)=\displaystyle(\frac{x+y}{2},\frac{x-y}{2})\)を得る。
いま、\(x,y\)はともに正の偶数であるため、\((x+y),(x-y)\)はいずれも正の偶数である。
よって、\(m,n\)はいずれも正の整数となる。
以上より、題意は示された。
(Q.E.D.)
問3の解説
最後に、問3です。
この問題では、\((m+n),(m-n)\)の偶奇に注目すればすぐに見通しが立つと思います。
これら2つの偶奇は一致するため、これらは「どちらも偶数」または「どちらも奇数」のどちらかです。
「どちらも奇数」だとすると、\((m+n)(m-n)\)は奇数となりますが、
\((m+n)(m-n)=1984×37\)であるため、この等式の右辺が偶数であることに矛盾します。
よって、\((m+n)(m-n)\)は偶数となります。
\(m+n>m-n\)に注意して、\((m+n,m-n)\)の組を求めると以下のようになります。
なお、\(1984×37=2^6×31×37\)です。
\(m+n\) | \(m-n\) |
\(2^5×31×37\) | \(2\) |
\(2^5×37\) | \(2×31\) |
\(2^5×31\) | \(2×37\) |
\(2^4×31×37\) | \(2^2\) |
\(2^4×37\) | \(2^2×31\) |
\(2^4×31\) | \(2^2×37\) |
\(2^3×31×37\) | \(2^3\) |
\(2^3×37\) | \(2^3×31\) |
\(2^2×37×31\) | \(2^4\) |
\(2×37×31\) | \(2^5\) |
\((m+n,m-n)\)の個数と\((m,n)\)の個数は1:1に対応するため、答えは10組となります。
2020年度に出題された「整数問題」
次に、2020年度に出題された「整数問題」をご紹介します。
これがかなりの難問で、問2までできるだけでも他の受験生と差をつけることができたのではないでしょうか。
問題はこちらから参照できます。
まずは「実験」から
様子がつかめない場合は、「整数問題」の解き方の定石である「実験」をまず行いましょう。
問1の6で操作を実行してみると、
6→3→10→5→16→8→4→2→1
となって、\(N(6)=8\)と分かります。
これだけだと、傾向がつかめないので他の数でも試してみましょう。
次は12で操作を実行してみると、
12→6→3→10→5→16→8→4→2→1
となって、\(N(12)=9\)と分かります。
最後に、48で操作を実行してみましょう。
48→24→12→6→3→10→5→16→8→4→2→1
となって、\(N(48)=11\)と分かります。
さて、これらからどのようなことが分かるでしょうか。
- \(a\)が与えられたとき、\(a\)が2で割り切れなくなるまで2で割り続ける
- 上記の操作で得られる奇数を\((2k+1)(k≧0)\)とすると、
\(N(a)\)は、上記で2で割った回数に\(N(2k+1)\)を足したものに等しい
ことがいえるでしょう。
ここで、\(N(2l+1)\)について、
\((2l+1)\)→\(3(2l+1)+1=2(3l+2)\)→\((3l+2)\)→・・・
となることを踏まえると、
- \(N(2^m(2k+1))=m+N(2k+1)(k,m≧0)\)…①
- \(N(2l+1)=2+N(3l+2)(l≧0)\)…②
という関係式が作れます。
これらの関係式を用いて問題を解いていきましょう。
なお、\(2^0=1\)とします。
問2の解説
まず、①と②を用いて\(N(168)\)を計算していきます。
\begin{eqnarray}
N(168)&=&N(2^3×21)\\
&=&3+N(2×10+1)\\
&=&3+2+N(3×10+2)\\
&=&3+2+N(2^5)\\
&=&3+2+5\\
&=&10
\end{eqnarray}
となります。
一方、\(N(8d)=N(2^3×d)=3+N(d)\)であるため、
\(N(168)-N(8d)=7-N(d)=3\)より、\(N(d)=4\)が導かれます。
このとき、1から逆算的に考えてゆくと、
\(N(d)=4\)となるとき、1←2←4←8←16となるしかありません。
そのため、\(d=16\)と求まります。
問3の解説
最後に、問3です。
試験本番であれば、これは正直捨てた方がよいです。
この問題では、「問題文で与えられている情報から別の情報を導き出してゆく」(積み上げ思考)しかありません。
そこから解決の糸口を探っていきましょう。
与えられている情報を整理すると以下のようになります。
- \(y\)の中央値が233.5…③
- \(f\)は37回目の操作を行ったときに得られる整数…④
- 38回目の操作で得られる整数は98…⑤
- \(N(2020)=53+N(160)\)…⑥
いま、④と⑤から\(f\)が導けそうですね。
38回目の操作で98が得られるとき、このときに行った操作は「2で割る」であることが分かります。
なぜなら「3をかけて1を足す」操作を行うと、\(3f+1=98\)が成立するはずですが、
この式から\(f=\displaystyle \frac{98}{3}\)となって、\(f\)が整数であることに矛盾するからです。
したがって、
\(f=98×2=196\)…⑦
です。
続いて、⑥を用いて\(N(2020)\)の値を求めていきましょう。
\begin{eqnarray}
N(2020)&=&53+N(2^5×5)\\
&=&53+5+N(2×2+1)\\
&=&53+5+2+N(3×2+2)\\
&=&53+5+2+N(2^3)\\
&=&53+5+2+3\\
&=&63
\end{eqnarray}
となるため、データの個数が63+1=64個と分かります。
ここで、③より、\(y\)の中央値に関して、
(32番目\(y\)の値)+(33番目の\(y\)の値)=233.5×2=467…⑧
が成り立ちます。
さて、⑦および⑧を踏まえて、問題に与えられている表を見ていきましょう。
\(x\) | \(e-2\) | \(e-1\) | \(e\) | \(e+1\) |
\(y\) | \(172\) | \(196\) | \(g\) | \(344\) |
⑧に関連して、\((e-2)\)番目および\((e-1)\)番目の\(y\)の値を足してみます。
そうすると、\(172+196=368\)となり、\(467\)に近いことが分かります。
そこで、
\((196+g)\)または\((g+344)\)のどちらかが467になる
とあたりをつけてみます。
\(196+g=467\)となるとき、\(g=271\)です。
\(y\)は左から小さい順で並んでいるので、\(196<g<271\)を満足することが分かります。
一方で、\(g+344=467\)となるとき、
\(g=123\)となって、\(196>g\)となり、\(y\)が左から小さい順に並ぶことに矛盾します。
以上から、\((e,f)=(33,271)\)となります。
まとめ:[中学数学]公立高で出題された「整数」の難問!都立西高校の自校作成問題を解説!
いかがでしたか。
今回は、都立西高校で出題された「整数問題」を解説しました。
50分という短い試験時間内でこれらを完答するのはかなり厳しいと思います。
日々の問題演習として思考力を高めるには良い問題ですが、試験本番では取捨選択することが求められます。
ですので、いったん時間内で解いてみて、その後できなかった問題をじっくりと考えるようにしてゆくとよいです。
引き続き、過去問等の解説を行ってゆくのでお楽しみに。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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