みなさんこんにちは、ゆーきゃんです。
これまで、「イオン」に関して説明していきました。
今回は「イオンと中和反応」の発展問題を解説していきます。
難関校では、たびたび高校で学ぶ化学の内容を中学生が解けるように焼き直して出題されます。
今回は、それを踏まえて問題を作ってみましたのでぜひ挑戦してみてください!
また、本記事と合わせて以下の記事も是非ご覧ください。
難関校を目指す方におすすめの問題集
難関校を目指す方におすすめの問題集をご紹介します。
公立高校に向けた対策を行いつつ、難関校の対策を行う場合には「ハイクラス徹底問題集」がおすすめです。
定期テストレベルから、公立高校レベル、難関校レベルと順にステップアップできるので、日々の学習で応用力まで養いたい方にはおすすめです。
基礎が固まり、難関校に向けて問題演習を行う場合には「最高水準問題集」がおすすめです。
全国の難関私立国立高校の入試から厳選して演習価値の高い問題が収録されており、
よく出る問題には「頻出」マークがついているなど入試で出やすい問題から対策できるなど、入試本番に向けて効率的に最高レベルの学力を養うことができます。
問題に挑戦してみよう!
早速、問題に挑戦してみましょう!
≪Ⅰ≫の解説
≪Ⅰ≫は「硫酸と電離平衡」をテーマとした問題です。
硫酸は完全に電離して、水素イオンと硫酸イオンに分かれると一般的にはいわれています。
しかし、硫酸は厳密には完全に電離しません。
この問題では、「硫酸が完全に電離している」とみなされるための条件を誘導をつけて考察させる構成となっています。
なお、平成30年度の灘高校でも「電離平衡」を背景とした問題が出題されています。
類題としてこちらも解いてみると効果的です。
問1の解説
平衡状態では、\(v_{1},v_{2}\)の値が一致するので、
\begin{gather}
k_{1}[HSO_4^{-}]=k_{2}[H^{+}][SO_4^{2-}]\\
\frac{[H^{+}][SO_4^{2-}]}{[HSO_4^{-}]}=\frac{k_{1}}{k_{2}}
\end{gather}
が成立します。
\(\frac{k_{1}}{k_{2}}\)の値は定数となるため、Xには\(\frac{[H^{+}][SO_4^{2-}]}{[HSO_4^{-}]}\)が入ります。
問2の解説
第1段階電離では、反応式②より、その収支は以下のようになります。
H2SO4 | → | H+ | + | HSO4– | |
電離前 | \(c\) | 0 | 0 | ||
変化量 | \(-c\) | \(+c\) | \(+c\) | ||
電離後 | 0 | \(c\) | \(c\) |
次に第2段階電離を考えます。
反応式③より、その収支は以下のようになります。
ここで、電離前の水素イオンでは、第1段階電離で生じた分を考慮することに注意します。
HSO4– | → | H+ | + | SO42– | |
電離前 | \(c\) | \(c\) | 0 | ||
変化量 | \(-c\alpha\) | \(+c\alpha\) | \(+c\alpha\) | ||
電離後 | \(c(1-\alpha)\) | \(c(1+\alpha)\) | \(c\alpha\) |
これらを問1の答えに代入して、Yには以下の式が入ります。
\begin{eqnarray}
\frac{[H^{+}][SO_4^{2-}]}{[HSO_4^{-}]}&=&\frac{c(1+\alpha)×c\alpha}{c(1-\alpha)}\\
&=&\frac{c\alpha(1+\alpha)}{1-\alpha}
\end{eqnarray}
問3の解説
問1・問2より、
\begin{gather}
\frac{c\alpha(1+\alpha)}{1-\alpha}=\frac{k_{1}}{k_{2}}=K\\
c\alpha(1+\alpha)=K(1-\alpha)\\
c\alpha^2+(c+K)\alpha-K=0
\end{gather}
となり、これを\(\alpha\)の二次方程式と見なして解くと、以下のようになります。
$$\alpha=\frac{-(c+K)\pm{\sqrt{(c+K)^2+4cK}}}{2c}$$
これらの解のうち、正の方を選べば、
$$\alpha=\frac{-(c+K)+\sqrt{(c+K)^2+4cK}}{2c}$$
となります。
問4の解説
問3の結果に、\(\alpha=0.50\)を代入して、
\begin{gather}
0.50=\frac{-(c+K)+\sqrt{(c+K)^2+4cK}}{2c}\\
c=-(c+K)+\sqrt{(c+K)^2+4cK}\\
c+(c+K)=\sqrt{(c+K)^2+4cK}
\end{gather}
ここで、両辺を2乗して整理すると、
\begin{gather}
\{c+(c+K)\}^2=(c+K)^2+4cK\\
c(3c-2K)=0\\
c=0,\frac{2}{3}K
\end{gather}
このうち、正の方の解を選んで、答えは、
$$c=\frac{2}{3}K$$
となります。
問5の解説
硫酸が完全に電離しているとみなせるとき、\(\alpha≒1\)が成立しなければなりません。
問3の結果に、\(\alpha≒1\)を代入すると、
\begin{gather}
1≒\frac{-(c+K)+\sqrt{(c+K)^2+4cK}}{2c}\\
2c≒-(c+K)+\sqrt{(c+K)^2+4cK}\\
2c+(c+K)≒\sqrt{(c+K)^2+4cK}
\end{gather}
ここで、両辺を2乗して整理すると、
\begin{gather}
\{2c+(c+K)\}^2≒(c+K)^2+4cK\\
8c^2≒0\\
c≒0
\end{gather}
を得ます。
ここで、\(c\)は硫酸の「濃度」を表しているため、この結果から「濃度」は限りなく0に近いことがいえます。
それが実現するには、「硫酸を水で十分に希釈する」しかありません。
よって、答えは「硫酸を水で十分に希釈する」となります。
なお、水で十分に希釈されていない硫酸を「濃硫酸」といいますが、これは完全に電離しない酸として知られています。
≪Ⅱ≫の解説
≪Ⅱ≫では「硫酸と水酸化バリウムの中和反応」をテーマとしています。
≪Ⅰ≫より硫酸は厳密には完全に電離しないにもかかわらず、中和反応ではそれが完全に電離したと考えないと実験結果が説明できないことになってしまいます。
なぜそのようなことが起きるのかを、≪Ⅰ≫で説明した反応式から考察させる構成となっています。
問6の解説
問6の答えは、「中和(反応)」となります。
問7の解説
硫酸と水酸化バリウムの中和は以下のような化学反応式に従います。
硫酸の電離の反応式は、以下のようになります。
H2SO4 → 2H+ + SO42-
一方、水酸化バリウムの電離の反応式は以下のようになります。
Ba(OH)2 → Ba2+ + 2OH–
これら2つの反応式の辺々を足し合わせることで、以下の化学反応式を得ます。
H2SO4 + Ba(OH)2 → BaSO4 + 2H2O
問8の解説
(イ)の解説
「中和反応」が完結するとき(中和点)、水溶液に流れる電流の大きさが最小になります。
よって答えは、
硫酸の電離によって生じた水素イオンがすべて滴下された水酸化バリウム水溶液に含まれる水酸化物イオンと結びつき、ともに個数が0となる。
となります。
中和反応におけるイオンの個数の変化に関して、こちらの記事もぜひご覧ください。
(ロ)の解説
一般に「イオン結晶は電離する」ことが知られています。
ですので、中和点において塩が電離し、電気を通すことになります。
しかし、塩が水に溶けにくい場合、電離が十分に進まず電気が通りにくくなります。
よって、
この中和反応で生じる塩である「硫酸バリウム」は、水に溶けにくい性質を持つ。
ということがいえます。
(ハ)の解説
中和点より前では、水酸化バリウム水溶液の滴下に応じて水素イオンの個数が減っていくので、それに伴い電流の大きさは小さくなっていきます。
一方で中和点以降では、水酸化バリウム水溶液の滴下に応じて水酸化物イオンの個数が増えていくので、それに伴い電流の大きさは大きくなっていきます。
(ニ)の解説
この問題では、「原子の質量比」を用いて以下のように解いていくとよいでしょう。
水酸化バリウム水溶液(ii)を50[mL]加えると中和点に達するため、
硫酸と反応した水酸化バリウムの個数は、\(K×\frac{50}{1000}\)となります。
ここで、硫酸と水酸化バリウムの反応における各物質の収支を示すと以下のようになります。
よって、生じる硫酸バリウムの個数は、\(K×\frac{50}{1000}\)です。
H2SO4 | + | Ba(OH)2 | → | BaSO4 | + | 2H2O | |
反応した粒子の個数 | $$K×\frac{50}{1000}$$ | $$K×\frac{50}{1000}$$ | – | – | |||
中和点における個数 | – | – | $$K×\frac{50}{1000}$$ | $$K×\frac{50}{1000}×2$$ |
\(K\)個あたりの硫酸バリウムの質量を\(m\)とすると、
\begin{gather}
K×\frac{50}{1000}:23.3=K:m\\
m×\frac{50}{1000}K=2.33K\\
m=2.33×20[g]
\end{gather}
となります。
いま、原子の質量比を用いると、硫酸と水酸化バリウムの粒子1個あたりの質量比は
硫酸 : 水酸化バリウム = (1×2+32+16×4) : (137+(16+1)×2) = 98 : 233
です。
これらを踏まえれば、
(粒子が\(K\)個集まったときの硫酸と水酸化バリウムの質量比)
=(硫酸と水酸化バリウムの粒子1個あたりの質量比)
ですから、硫酸分子が\(K\)個集まったときの質量を\(M\)とすれば、
\begin{gather}
M:2.33×20=98:233\\
233M=2.33×20×98\\
M=19.6[g]
\end{gather}
となります。
以上から、質量パーセント濃度の公式を用いて、求める濃度は
$$\frac{19.6[g]}{1.0[g/cm^3]×1000[cm^3]}×100=1.96[\%]$$
と求まります。
問9の解説
問3の結果を踏まえ、水溶液(i)の水素イオンの濃度は
$$c(1+\alpha)=K×\{1+\frac{-(K+K)+\sqrt{(K+K)^2+4K^2}}{2K}\}=\sqrt{2}K$$
となります。
よって、空のビーカーにはかりいれた水溶液(i)に含まれる水素イオンの個数は、
$$\sqrt{2}K×\frac{50}{1000}=\frac{\sqrt{2}}{20}K$$
となります。
問10の解説
求める水酸化バリウム水溶液(ii)の体積を\(V\)[mL]とします。
中和点においては、
(酸から放出された「水素イオン」の個数)=(アルカリから放出された「水酸化物イオン」の個数)
が成り立ちます。
また、水酸化バリウムの電離式は以下のようになっていました。
Ba(OH)2 → Ba2+ + 2OH–
水酸化バリウム粒子1個から、2個の水酸化物イオンが放出されるため、
水溶液(ii)1.0[L](=1,000[mL])に含まれる水酸化物イオンの個数は\(2K\)となることに注意して、
\begin{gather}
2K:1000=\sqrt{2}K×\frac{50}{1000}:V\\
V=25\sqrt{2}[mL]
\end{gather}
と求まります。
問11の解説
問10の結果は、実際の中和反応の実験における必要であった水溶液(ii)の体積よりも小さくなっていることが分かります。
硫酸は第1段階電離では完全に電離するため、
中和反応では、第2段階電離(反応式③)の右向きの反応(水素イオンが生じる方向の反応)が進み、最終的に硫酸水素イオンが完全に電離した状態になった。
ことが読み取れ、これが答えとなります。
一般に平衡状態が成立しているとき、反応の条件を変化させるとそれを打ち消す方向に反応が進み、新たな平衡状態が生み出されます(「ルシャトリエの原理」)。
このとき、酸にアルカリを加えているので、その影響を打ち消すために水素イオンが生じる方向に反応が進みます。
まとめ:[中学理科]難関校志望者向け「イオンと中和反応」の発展問題を解説!
いかがでしたか。
今回は、「イオンと中和反応」の発展問題を解説しました。
今回扱った問題のように高度な科学的思考力が求められる問題が難関校では出題されます。
一度で出来なかったとしても繰り返し解き、理解できるようになれば問題ありません。
次回は、「電池・電気分解」に関する問題を扱っていきますのでお楽しみに。
最後までご一読いただきありがとうございました。
また、本記事と合わせて以下の記事も是非ご覧ください。
コメント