みなさんこんにちは、ゆーきゃんです。
今回のテーマは、「物体が回転しない条件」についてです。
2020年の灘高校の入試問題でこれをテーマとした問題が出題されました。
唐突に謎の誘導がついていたため戸惑った受験生も多かったと思います。
今回はこの問題を通じて、「物体が回転しない条件」について考えていきたいと思います。
また、本記事と合わせて以下の記事もご覧ください。
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2020年灘高校入試問題・大問6の概要
大問6が「物体が回転しない条件」をテーマとした問題です。
問題はこちらから参照できます。
この問題では、途中で
物体が静止しているとき、中心軸まわりの「重力が物体を回転させる働き」と「空気の押す力が物体を回転させる働き」が一致している。
という謎な誘導がついています。
この誘導を用いて、左側の部屋の圧力を問2以降で解いてゆくこととなります。
そもそも「物体を回転させる働き」とは一体何を意味しているのでしょうか。
「力のモーメント」の導入
以前の記事で、物体が静止しているときは「それに働く力がつりあっている」ということを解説しました。
実際、それだけでは物体が静止するには不十分で、それを含めた2つの条件を満たす必要があります。
物体が静止するには、「物体が回転しない」という条件も満たさなければならないのです。
物体の回転に関わる力学の概念として、「力のモーメント」というものがあります。
また、物体が回転しないとき、左回り・右回りに回転させる力のモーメントを考えれば、
ということも理解しておきましょう。
灘高校入試問題の話に戻ると、問題で与えられている誘導は、
実は「中心軸まわりにおける左回り・右回りに回転させる力のモーメントの総和が等しい」ということをいっているのです。
それを踏まえ、大問6を考えていきましょう。
大問6の解説
それでは、大問6の解説です。
問1の解説
1[hPa]=100[Pa]=100[N/m2]であることに注意して、
左側の部屋の空気が物体を押す力の大きさは
833×100[N/m2] × 0.2[m] × 0.5[m]= 8,330[N] となります。
また、右側の部屋の空気が物体を押す力の大きさは
1,013×100[N/m2] × 0.2[m] × 0.5[m] = 10,130[N] となります。
問2の解説
図3において、物体の重さを\(F\)[N]とおき、物体に働く力を図示すると以下のようになります。
このとき、円筒面から受ける垂直抗力は中心に向かう方向に働いており、
物体を回転させる働きはないため、問題の誘導ではこの力を無視しています。
物体の重力の、中心軸と重力の作用点を結んだ線分に対する垂直な成分の大きさは、
重力と半径のなす角が 180° – 105° – 45° = 30°ゆえ、\(\displaystyle \frac{F}{2}\)となります。
空気による力は一様に働くため、中心軸から\(\displaystyle \frac{0.5}{2}=0.25\)[m]離れたところを作用点として考えればよいです。
また、物体の作用点について、中心軸から\(x\)[m]離れたところにあるとします。
よって、中心軸まわりの力のモーメントのつりあいより、
\begin{gather}
8330×0.25+\frac{F}{2}x=10130×0.25\\
Fx=3600×0.25[N・m]…(*)
\end{gather}
となります。
図4では、中心軸と重力の作用点を結んだ線分に対する垂直方向成分に関して、大きさは図3のときと同じですが、
この力は図3と異なり、物体を右回りに回転させようとすることに注意します。
このとき、左側の部屋の圧力を\(P_1\)[hPa]とおくと、空気が物体を押す力の大きさは
(\(P_1\)×100)[N/m2] × 0.2[m] × 0.5[m] = 10\(P_1\)[N] です。
以上を踏まえ、中心軸まわりの力のモーメントのつりあいを考えて、(*)を用いると
\begin{gather}
10P_1×0.25=10130×0.25+\frac{F}{2}x\\
10P_1×0.25=10130×0.25+\frac{1}{2}×3600×0.25\\
P_1=\frac{10130+1800}{10}=1193[hPa]
\end{gather}
と求まります。
問3の解説
求める気圧の大きさを\(P_2\)[hPa]とおくと、空気が物体を押す力の大きさは
(\(P_2\)×100)[N/m2] × 0.2[m] × 0.5[m] = 10\(P_2\)[N] です。
このとき、回転軸まわりの力のモーメントのつりあいより、(*)を用いると、
\begin{gather}
10P_2×0.25=10130×0.25+Fx\\
10P_2×0.25=10130×0.25+3600×0.25\\
P_2=\frac{10130+3600}{10}=1373[hPa]
\end{gather}
と求まります。
問4の解説
中心角が60°の物体の重心の位置は?
問4のポイントは、中心角が60°である物体の重心の位置がどこにあるかということです。
これについて考えるために、まず図3を検討してみます。
もとの物体を中心角が90°である物体と中心角が30°である物体の2つに分けて考えます。
中心角が60°である物体の重心の位置と中心軸との距離を\(y\)とおきます。
このとき、中心角が60°の物体の重力のモーメントは、
その重力の大きさが\(\displaystyle \frac{60}{90}F=\frac{2}{3}F\)であるから、
上の図より、\(\displaystyle \frac{2}{3\sqrt{2}}Fy\)となります。
向きは反時計まわりです。
一方で、中心角が30°の物体の重力のモーメントは、重心が鉛直線上にあるため、0です。
さて、もとの物体の重力のモーメントは、問2での考察により、\(\displaystyle \frac{1}{2}Fx\)です。
向きはこちらも反時計まわりです。
ここで、
(もとの物体の重力のモーメント)
=(中心角が60°の物体の重力のモーメント)+(中心角が30°の物体の重力のモーメント)
となるはずですから、\(\displaystyle \frac{1}{2}Fx=\frac{2}{3\sqrt{2}}Fy+0\)が成り立ちます。
よって、\(y=\displaystyle \frac{3\sqrt{2}}{4}x\)となります。
「力のモーメント」のつりあいを考える
あとは「力のモーメント」のつりあいの式を立てれば求まります。
求める気圧の大きさを\(P_3\)[hPa]とおくと、空気が物体を押す力の大きさは
(\(P_3\)×100)[N/m2] × 0.2[m] × 0.5[m] = 10\(P_3\)[N] です。
「力のモーメント」のつりあいを考えて、(*)を用いると、
\begin{gather}
10P_3×0.25=10130×0.25+\frac{2}{3\sqrt{2}}Fy\\
10P_3×0.25=10130×0.25+\frac{2}{3\sqrt{2}}F×\frac{3\sqrt{2}}{4}x\\
10P_3×0.25=10130×0.25+\frac{1}{2}Fx\\
10P_3×0.25=10130×0.25+\frac{1}{2}×3600×0.25\\
P_3=\frac{10130+1800}{10}=1193[hPa]
\end{gather}
と求まります。
まとめ:[中学理科]灘高校で出題された「物体が回転しない条件」と「力のモーメント」の関係を解説!
いかがでしたか。
今回の記事では、「物体が回転しない条件」を解説しました。
物体が静止しているときは、力のつり合いおよびモーメントの総和が0になることを意識しましょう。
今後も難関校の問題を通じて、その背景にある物理学的な理論の解説を行っていきます。
ご一読いただきありがとうございました。
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