みなさんこんにちは、ゆーきゃんです。
今回は、名古屋大学理系数学「2次方程式の整数解」に関する問題を解説します。
問題自体はシンプルですが、やってみるとかなり難しい問題になっています。
そのため誘導を付けておきますが、数学が得意な方は誘導を見ずに自力で考えてみるとよいでしょう。
それでは、やっていきましょう!
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問題の概要
名古屋大学の理系数学で出題された次の「整数問題」に挑戦してみましょう。
次の問に答えよ。
【1】\(n\)を整数とする。\(\displaystyle (n-\frac{n}{n+1})\)が整数となるとき、\(n\)の値を求めよ。
【2】\(m\)を整数とする。\(\displaystyle (m-1+\frac{2}{m+1})\)が整数となるとき、\(m\)の値を求めよ。
【3】\(a,b\)は\(a≧b>0\)を満たす整数とし、\(x\)と\(y\)の2次方程式\(x^2+ax+b=0\),
\(y^2+by+a=0\)がそれぞれ整数解をもつとする。(名古屋大学・理系)
(1)\(a=b\)とするとき、条件を満たす整数\(a\)をすべて求めよ。
(2)\(a>b\)とするとき、条件を満たす整数の組\((a,b)\)をすべて求めよ。
【1】の解説
\(n\)は整数なのですから、\(\displaystyle (n-\frac{n}{n+1})\)が整数となるとき、
\(\displaystyle \frac{n}{n+1}\)は整数でなくてはなりません。
\(\displaystyle \frac{n}{n+1}=\frac{(n+1)-1}{n+1}=1-\frac{1}{n+1}\)ですから、
その条件が満たされるとき、\(n+1=-1,1\)である必要があります。
よって、\(n=-2,0\)となります。
【2】の解説
\(m\)は整数なのですから、\(\displaystyle (m-1+\frac{2}{m+1})\)が整数となるとき、\(\displaystyle \frac{2}{m+1}\)は整数でなくてはなりません。
これが成り立つとき、その分母である\((m+1)\)が、\(m+1=-2,-1,1,2\)となる場合に限られます。
よって、\(m=-3,-2,0,1\)となります。
1.と2.ともに、これまで解説してきたように、
ことが求められていました。
【3】の解説
(1)の解説
それでは本題である名古屋大学の問題を見ていきましょう。
この問題は\(a\)の値が問われているので、\(x^2+ax+a=0\)の左辺を\(a\)でくくってみます。
そうすると、①が得られます。
\begin{gather}
x^2+ax+a=0\\
x^2+a(x+1)=0\\
a(x+1)=-x^2…①
\end{gather}
①において、\(x=-1\)とすると、明らかに等号は成り立ちません。
よって、\(x≠-1\)で考えます。
そうすると、①の両辺を\((x+1)\)で割って、\(a=\displaystyle -\frac{x^2}{x+1}…②\)が得られます。
ここで、【1】の結果を思い出しましょう。
\(\displaystyle n-\frac{n}{n+1}=\frac{n^2}{n+1}\)となりますから、【1】の結果が利用できそうです。
そうすると②において、\(x\)は整数ですから、\(x=-2,0\)に限られます。
\(x=0\)のとき、\(a=0\)となり、\(a>0\)とならず不適です。
\(x=-2\)のとき、\(a=4\)が得られます。
よって、答えは\(a=4\)となります。
(2)の解説
2次方程式の解が満たすべき制約を考える
ここからが難易度がグッと上がります。
とりあえず、2次方程式の問題なので、「解と係数の関係」を用いてみましょう。
\(x^2+ax+b=0\)の解を、\(x=\alpha, \beta\)とおきます。
なお、\(\alpha\)を整数とします。
そうすると、解と係数の関係より、
\begin{cases}
\alpha+\beta=-a \\
\alpha\beta=b
\end{cases}
つまり、
\begin{cases}
a=-\alpha-\beta…③ \\
b=\alpha\beta…④
\end{cases}
が得られます。
④より、\(b\)が正の整数となるには、\(\alpha, \beta\)は同符号でなければなりません。
また③より、\(a\)も正の整数となるため、結局のところ\(\alpha,\beta\)はいずれも負の整数である必要があります。
\(a>b\)より、\(a-b>0\)ですから、③ー④を計算すると、
\begin{eqnarray}
a-b&=&-\alpha-\beta-\alpha\beta\\
&=&-(\alpha\beta+\alpha+\beta+1)+1\\
&=&-(\alpha+1)(\beta+1)+1
>0
\end{eqnarray}
となりますので、\((\alpha+1)(\beta+1)<1\)が成立しなければなりません。
ここでもやはり、整数問題の解法の定石である「因数分解」が活きてくることになります。
もし、\(\alpha≦-2<-1\)かつ\(\beta≦-2<-1\)であるとすれば、
\(\alpha+1≦-1\), \(\beta+1≦-1\)より、\((\alpha+1)(\beta+1)≧1\)となりますが、
これは\((\alpha+1)(\beta+1)<1\)に矛盾します。
それに対して、これらのうち少なくとも一方が-1であれば、
\((\alpha+1)(\beta+1)=0\)となり、\((\alpha+1)(\beta+1)<1\)が満たされることになります。
よって、\(\alpha, \beta\)の少なくとも一方が-1であることが分かります。
いま、\(\alpha≦\beta\)としても一般性を失いませんので、以下そのように考えます。
そうすると、\(\beta=-1\)であり、③・④から、
\begin{cases}
a=1-\alpha…③’ \\
b=-\alpha…④’
\end{cases}
が成り立ちます。
\(\alpha\)の絞り込みを行う
③’および④’を、\(y^2+by+a=0\)に代入すると、\(y^2-\alpha y+1-\alpha=0…⑤\)が得られます。
⑤の左辺を\(\alpha\)でくくると、
\begin{gather}
y^2-\alpha y+1-\alpha=0\\
-\alpha(y+1)+y^2+1=0\\
\alpha(y+1)=y^2+1…⑥
\end{gather}
⑥において、\(y=-1\)とすると、明らかに等号は成り立ちません。
よって、\(y≠-1\)で考えます。
そうすると、⑥の両辺を\((y+1)\)で割って、\(\alpha=\displaystyle \frac{y^2+1}{y+1}…⑦\)が得られます。
\(\alpha\)が整数になるとき、\(y\)の値は果たしてどうなるでしょうか。
ここで、【2】の結果を考えてみましょう。
\(\displaystyle m-1+\frac{2}{m+1}=\frac{m^2+1}{m+1}\)となりますね。
そうすると、いまの問題に対して、【2】の結果が利用できそうです。
そうすると、\(y=-3,-2,0,1\)となります。
よって、③’・④’より、以下の組が得られます。
\((y,\alpha,a,b)=(-3,-5,6,5),(-2,-5,6,5),(0,1,0,-1),(1,1,0,-1)\)
これらのなかで、\(a>b≧0\)を満たすものは、\((a,b)=(6,5)\)のみです。
答えは、\((a,b)=(6,5)\)と決まります。
まとめ:[大学入試]中学生でも解ける!名古屋大学理系数学「2次方程式の整数解」に関する問題を解説!
いかがでしたか。
今回は、名古屋大学理系数学「2次方程式の整数解」に関する問題を解説しました。
2次方程式を題材としているので中学生でも取り組むことができますが、
「範囲の絞り込み」や「因数分解」を駆使しながら論理を展開してゆく難しい問題でした。
どのような整数問題でも「整数問題の解法の定石」を意識したいところです。
引き続き、過去問の解説を行っていくのでお楽しみに。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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