みなさんこんにちは、ゆーきゃんです。
前回まで「整数問題」の解き方について解説してきました。
今回の記事では、難関校で出題された整数問題の良難問を解説していきます。
数学が得意な人・難関校を目指す方は是非挑戦してみてください!
また、本記事と合わせて以下の記事もぜひご覧ください。
2020・東大寺学園高・大問3
まずは、2020年東大寺学園高の大問3に挑戦してみましょう。
整数問題の中でも変化球的な問題で、思考力を試す良問です。
問題はこちらから参照できます。
(1)の解説
まずは、(1)です。
整数問題のアプローチとして、因数分解・周期性・範囲を絞るの3つがありましたが、
因数分解と周期性によるアプローチはこの問題では利用できなさそうです。
よって、「範囲を絞る」という方針で解いていきます。
与えられた不等式の各辺を2倍したあとに、1を引きます。
$$1<2p-1<2q-1<2r-1$$
そして、各辺を\(q\)で割ると、
$$\frac{1}{q}<\frac{2p-1}{q}<2-\frac{1}{q}$$
となり、上記の不等式を満たす整数は1のみです。
よって、答えは1となります。
(2)の解説
(2)においても引き続き不等式で評価し、範囲を絞り込んでいきましょう。
\(1<p<q<r\)より、
$$\frac{1}{r}<\frac{1}{q}<\frac{1}{p}$$
ですから、
$$\frac{2r-1}{r}=2-\frac{1}{r}<\frac{2r-1}{q}<\frac{2r-1}{p}$$
となります。
ここで(1)より\(r=2p-1\)ですから、\(2r-1=4p-3\)となるため上記の不等式は、以下のようになります。
$$\frac{2r-1}{r}=2-\frac{1}{2p-1}<\frac{2r-1}{q}<\frac{4p-3}{p}=4-\frac{3}{p}$$
この不等式を満たす整数は2または3となりますね。
もし、\(\frac{2r-1}{q}=2\)となるとき、\(2r-1=2q\)となりますが、左辺が奇数・右辺が偶数となり矛盾します。
よって、2は不適となります。
以上から、
$$\frac{2r-1}{q}=3$$
と求まります。
(3)の解説
(1),(2)より、\(q=\frac{2r-1}{3}=\frac{2(2p-1)-1}{3}=\frac{4}{3}p-1\)ですから、
$$\frac{3(2q-1)}{p}=\frac{6q-3}{p}=8-\frac{9}{p}$$
となります。
この式が整数となるとき、\(p>1\)に注意して、\(p=3,9\)に絞られます。
\(p=3\)のとき、\(q=3\)となって\(p<q\)に矛盾し、不適です。
\(p=9\)のとき、\(q=11,r=17\)となって\(1<p<q<r\)を満足するので、これが答えとなります。
2018・開成高・大問3
次は、2018年開成高の大問3です。
このパターンの問題もたびたび出題されるので、経験しておきたい1問です。
問題はこちらから参照できます。
(1)の解説
1以上9以下の整数には、偶数として、\(2,4(=2^2),6(=2×3),8(=2^3)\)が含まれます。
これを踏まえると、
\(6!\)を素因数分解すると、2の指数が4になるため、\(≪6!≫=4\)となります。
\(8!,9!\)を素因数分解すると、2の指数が7になるため、\(≪8!≫=≪9!≫=7\)となります。
(2)の解説
(2)に入る前に、少し実験をしてみます。
\(6!\)に含まれる1から6までの整数を、次のように整理してみます。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 〇の合計 | |
\(2\)の倍数 | 〇 | 〇 | 〇 | 3 | |||
\(2^2\)の倍数 | 〇 | 1 |
このとき、「各行の〇の合計」を合算すると、\(3+1=4\)となります。
同様に\(9!\)に含まれる1から9までの整数を、次のように整理してみます。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 〇の合計 | |
\(2\)の倍数 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 4 | |||||
\(2^2\)の倍数 | 〇 | 〇 | 2 | |||||||
\(2^3\)の倍数 | 〇 | 1 |
このとき、「各行の〇の合計」を合算すると、\(4+2+1=7\)となります。
これらからどのようなことが示唆されるでしょうか。
- \(n!\)に含まれる各偶数を順に2で割ってゆくと、それに含まれる偶数の個数と同じ回数だけ割ることになる。
- その上で残っている偶数を順に2でわってゆくと、\(n!\)に含まれる4の倍数の個数と同じ回数だけ割ることになる。
- その上で残っている偶数を順に2でわってゆくと、\(n!\)に含まれる8の倍数の個数と同じ回数だけ割ることになる。
この一連の操作を\(n!\)から偶数がなくなるまで続けたとき、
これらの割った回数を合計したものが\(≪n!≫\)と一致することがいえます。
このことを踏まえ、\(≪212!≫\)を考えてみます。
- \(212\)に含まれる偶数の個数は、\(212÷2=106\)より、\(106\)です。
- \(212\)に含まれる\(2^2\)の倍数の個数は、\(212÷4=53\)より、\(53\)です。
- \(212\)に含まれる\(2^3\)の倍数の個数は、\(212÷8=26…4\)より、\(26\)です。
- \(212\)に含まれる\(2^4\)の倍数の個数は、\(212÷16=13…4\)より、\(13\)です。
- \(212\)に含まれる\(2^5\)の倍数の個数は、\(212÷32=6…20\)より、\(6\)です。
- \(212\)に含まれる\(2^6\)の倍数の個数は、\(212÷64=3…20\)より、\(3\)です。
- \(212\)に含まれる\(2^7\)の倍数の個数は、\(212÷128=1…84\)より、\(1\)です。
以上より、\(106+53+26+13+6+3+1=208\)と答えが求まります。
(3)の解説
\(≪212!≫\)の結果を踏まえると、214を素因数分解すると2の指数が1となるため、
\(≪214!≫=≪212!≫+1=209\)となります。
また、216を素因数分解すると2の指数が3となるため、
\(≪216!≫=≪214!≫+3=212\)となります。
\(216!\)と\(217!\)には全く同じ偶数が含まれるので、答えは\(n=216,217\)となります。
(4)の解説
この問題でも実験から始めましょう。
整数\(N\)を整数\(K\)で割ったときの商を、\(\lfloor \frac{N}{K} \rfloor\)と表すことにします。
\begin{eqnarray}
≪10!≫&=&\lfloor \frac{10}{2} \rfloor+\lfloor \frac{10}{2^2} \rfloor+\lfloor \frac{10}{2^3} \rfloor=8\\
≪11!≫&=&\lfloor \frac{11}{2} \rfloor+\lfloor \frac{11}{2^2} \rfloor+\lfloor \frac{11}{2^3} \rfloor=8\\
≪12!≫&=&\lfloor \frac{12}{2} \rfloor+\lfloor \frac{12}{2^2} \rfloor+\lfloor \frac{12}{2^3} \rfloor=10\\
≪13!≫&=&\lfloor \frac{13}{2} \rfloor+\lfloor \frac{13}{2^2} \rfloor+\lfloor \frac{13}{2^3} \rfloor=10\\
≪14!≫&=&\lfloor \frac{14}{2} \rfloor+\lfloor \frac{14}{2^2} \rfloor+\lfloor \frac{14}{2^3} \rfloor=11\\
≪15!≫&=&\lfloor \frac{15}{2} \rfloor+\lfloor \frac{15}{2^2} \rfloor+\lfloor \frac{15}{2^3} \rfloor=11\\
≪16!≫&=&\lfloor \frac{16}{2} \rfloor+\lfloor \frac{16}{2^2} \rfloor+\lfloor \frac{16}{2^3} \rfloor+\lfloor \frac{16}{2^4} \rfloor=15
\end{eqnarray}
となってゆくことから、\(≪2!≫=1,≪4!≫=3,≪8!≫=7\)となることも踏まえて、
\(k\)を整数として、\(n=2^k\)であれば、\(≪n!≫=n-1\)となることが分かります。
よって、\(n\)を5つ列挙すると、\(n=2,4,8,16,32\)となります。
ここからは余談ですが、\(r\)を1以外の実数、\(l\)を整数として、
$$1+r+…+r^{l-2}+r^{l-1}=\frac{r^l-1}{r-1}$$
となることを用いれば、
\begin{eqnarray}
≪2^k!≫&=&\lfloor \frac{2^k}{2} \rfloor+\lfloor \frac{2^k}{2^2} \rfloor+…+\lfloor \frac{2^k}{2^{k-1}} \rfloor+\lfloor \frac{2^k}{2^k}\rfloor\\
&=&2^{k-1}+2^{k-2}+…+2+1\\
&=&2^k-1
\end{eqnarray}
となり、\(n=2^k\)であれば、\(≪n!≫=n-1\)となることがいえます。
2021・灘高・大問3
最後に総仕上げとして、2021年の灘高の大問3にチャレンジしてみましょう。
問題はこちらから参照できます。
(1)の解説
(1)の解説に入っていきましょう。
\begin{eqnarray}
p^2&=&\{2ab+(3a+4)\}^2\\
&=&4a^2b^2+4ab(3a+4)+(3a+4)^2\\
&=&4a\{ab^2+(3a+4)b\}+(3a+4)^2
\end{eqnarray}
となりますね。
問題で与えられた条件式より、\(ab^2+(3a+4)b=-2a-6\)ですからこれを上記の式に代入して、
\begin{eqnarray}
p^2&=&4a\{ab^2+(3a+4)b\}+(3a+4)^2\\
&=&4a(-2a-6)+(3a+4)^2\\
&=&a^2+16
\end{eqnarray}
を得ます。
(2)の解説
(1)で得られた式から、\(p^2-a^2=16\)となります。
左辺を因数分解し、\(p=2ab+3a+4\)を代入すると、
\begin{gather}
p^2-a^2=16\\
(p+a)(p-a)=16\\
(2ab+3a+4+a)(2ab+3a+4-a)=16\\
(2ab+4a+4)(2ab+2a+4)=16
\end{gather}
となり、両辺を4で割って、\((ab+2a+2)(ab+a+2)=4\)を得ます。
この式から、\(a,b\)が0でない整数であるため、
\((ab+2a+2,ab+a+2)=(4,1),(2,2),(1,4),(-4,-1),(-2,-2),(-1,-4)\)
と候補が定まります。
\((ab+2a+2,ab+a+2)=(4,1)\)のとき、次の連立方程式
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
ab+2a+2=4 \\
ab+a+2=1
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
において、上の式から下の式を引くと、\(a=3\)となります。
この値を上あるいは下どちらかの式に代入して解くと、\(b=-\frac{4}{3}\)となりますが整数にならず不適です。
同様にして他の組に関しても\((a,b)\)の値を求めてゆくと、
\((ab+2a+2,ab+a+2)=(-1,-4)\)のときのみに、条件に合致する\((a,b)=(3,-3)\)が得られます。
よって、これが答えとなります。
なお、この問題では誘導に乗らずに、解くこともできます。
最も次数の低い\(a\)で等式①を整理すると、
\begin{gather}
ab^2+(3a+4)b+2a+6=0\\
(b^2+3b+2)a+4b+6=0\\
(b+1)(b+2)a+4(b+1)+2=0
\end{gather}
となり、\((b+1)(b+2)a+4(b+1)+2=0\)において、2を移項して左辺を因数分解すると、
$$(b+1)\{(b+2)a+4\}=-2$$
となります。
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この式を満たす\((a,b)\)の組は何であるかと考えても、答えは一致します。
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まとめ:[高校入試]一度は取り組んでおきたい「整数問題」の良難問を解説!
いかがでしたか。
今回の記事では、1回は取り組んでおきたい「整数問題」の良難問を解説を行いました。
東大寺学園・開成・灘といった全国屈指の難関校の問題を扱いましたが、
どれも整数問題のエッセンスがつまった問題で、これらを初見でできるようであれば十分に力がついてきているといえるでしょう。
今回ご紹介した問題集にも取り組み、盤石な学力を身に着けていってほしいと思います。
また、本記事と合わせて以下の記事もぜひご覧ください。
ご一読いただきありがとうございました。
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